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【PR NOW#008】 大ヒットエンタメコンテンツに学ぶブランドアクションのヒント

はじめまして。
今年度よりプラチナムに新設された、コミュケーションデザイン局に在籍しているプランナーの杉山と申します。

「チャンスの神様には前髪しかない」 と言いますが、
人を捕まえる時に髪の毛を掴むことが前提となっている世界は悲しいです。

さて、昨年4月の緊急事態宣言以降、個人的にエンタメコンテンツに触れる機会が急増しました。
同じ方も多いのではないかと思いますが、
そんな中で日頃の業務に通ずるような気づきもありました。

例えば、『登場人物の個性』という共通認識が、視聴者の心を動かし感動を引き立てるのに効果を発揮しているということです。
どの作品にも特に共感はできないキャラクターが登場しますが、
いつのまにか彼らに心動かされ気づけば涙する自分がいるのです。

各キャラクターの個性が明確に規定され、
視聴者がそれをベースとして認識するからこそ、
登場人物達が困難や不条理に直面した際に現れるギャップのある一面や非合理的な行動といった、
“人間らしさの垣間見える瞬間” がより一層共感をもたらすスパイスとなります。

近年PRにおいてストーリーやパーパスの重要性が謳われていますが、
エンタメコンテンツ内におけるクライマックスシーンのように、
企業やブランドによる一貫したスタンスを基盤としつつも
ここぞというタイミングに垣間見える、“ブランドの人間らしさ” として機能するクリエイティブは人々に強烈な共感をもたらし、
新たな関係を築いたり、既にある関係をより強固にしたりする、
“心の接着点”として作用するのではと思うようになりました。

クライマックスは必ず、困難の最中に訪れます。
ブランドが、独自の存在意義や信念といったものを前提に、
仮想敵とどのように向き合い、
どのような形で想いを伝えるアクションを起こしていくのか。
またそういった一連のストーリーの中で人々がいかに感情を揺さぶられ、
ブランドに対する思いを生むのか。

今回は、大ヒットエンタメ作品の(個人的に)ぐっと来たシーンやエピソードを参考にPR事例を紐解く形で、
人々が聞き耳を立てるブランドアクションのヒントについて(大変恐縮ながら)ご紹介してみたいと思います。

※以下、一部エンタメ作品のネタバレを含みますのでご注意ください。


1. 非合理が生む凄みに乗せた覚悟表明

■参考コンテンツ 「天気の子」 ~ 帆高の覚悟 ~

1つ目にご紹介する事例は、新海誠監督の「天気の子」です。

個人的クライマックスは、優しく賢い典型的な好青年“帆高”が見せる覚悟のシーンです。

物語終盤で、ヒロインの少女“陽菜”が命の危機に瀕するのですが、
<天に呪われている陽菜を救うと、世界から永遠に雨がやまなくなる>
というヤバイ状況に追い込まれます。
帆高は躊躇なく陽菜を救おうとするのですが、
足止めをしようとする警官に対し、銃口を向け発砲します。

この決断によって陽菜の命は救われる一方で世界は永遠に雨のやまない状態となり、浸水した街の描写と共に物語は幕を閉じます。

「好青年 × 銃」 というギャップに乗せた帆高の覚悟と、
物語が小奇麗にまとまりきらない不完全さが強烈な違和感を纏い、
「愛にできることはまだあるかい」と尋ねる野田洋次郎に対するアンサーとして「常識の正義」 に対する 「等身大で本音の全正義」 を遺憾なく主張してきます。

■参考事例① 「HONDA:負けるもんか。」

CMを中心に、各地のOOHで、メッセージと本田のロゴを載せたポスターを掲出する広告キャンペーンを展開しました。

PRの観点からは、CMとOOHで‟メッセージを発信するだけ”というアクティベーションと、
クリエイティブのアウトプットは非常にシンプルなように思われますが、
円高や欧州の債務危機などで輸出が減ったことから生産なども落ち込み、
景気が後退局面に転じていた2012年。
停滞したムードを受け、
人々が無意識のうちに暗澹たる感情を抱きがちな時代背景の中、
創業者本田宗一郎の言葉を元に綴られた、
チャレンジ精神の不毛さや困難さを理解し認めたたうえで、
本田としてのものづくりのスピリットと覚悟を表明する骨太なメッセージに、当時多くの人々が共感し反響を生み、
今でも色褪せない広告事例の1つとして語られます。

事実や意味の奥底にある時代の雰囲気を捉えたうえで、
‟誰もが知る日本を代表するモノづくり企業” としての立場も踏まえて行った
人間味を感じさせる意思と覚悟の表明というアクションを通じ、
人々が聞き耳を立て、頷かせた事例ではないでしょうか。

2. 語らない演出

■参考エンタメコンテンツ:「ちびまる子ちゃん」 キートン山田感謝のメッセージ

二つ目の事例は、ちびまる子ちゃんのナレーションを務めていたおなじみのナレーター “キートン山田” が引退に際し感謝のメッセージを述べる回です。
人類がちびまる子ちゃんに泣かされたのは、
2018年放送の神回 「まる子、布団をふかふかにしたい」 以来のことではないでしょうか。

まるちゃんの落としたハンカチを拾ってくれた男性が、
“何故か” 「まるちゃん、ありがとう」と感謝を告げ、
特に名乗ることもなく去っていくのですが、
その人物こそ、ちびまる子ちゃん公開開始以来約31年間ナレーションを務めてきたキートン山田であり、
ちびまる子ちゃんという作品、ないしは全国の人々に対するサービス精神の込められた感謝のメッセージであることに視聴者が気づかされる鳥肌シーンです。
あからさまに語らない方が、想いが心の奥深くまで伝わることもあるのだなと実感しました。

■参考事例 「UNIQLO:21SSLifeとWear」

『服のチカラを、社会のチカラに。』 というメッセージを掲げ、
性的指向や性自認における多様性を尊重し、
誰もが働きやすい環境づくりにも率先して取り組んでいるUNIQLO。
2021年4月放送開始のウェブCMで、実際の女性カップルを起用しました。

動画内では、同棲しているレズビアンカップルの仲睦まじい様子の他、
花屋のスタッフ役で登場する俳優・綾瀬はるかが、花を選んでいるカップルを見て 「もしかして、記念日ですか?」 と、
ごくごく自然に対応している様子が描かれています。

マイノリティを包括する社会の実現は急務であり重要なことですが、
敢えて声高に同性カップルを肯定するような表現や主張は交えず、
‟当たり前な日常として描き切る”という演出によって、
そこに‟違和感を持つ”という視聴者自身の感覚を通じ、
誰よりも率先して多様性のある環境づくりに取り組むUNIQLOの姿勢、
また、社会における“ステレオタイプ”の存在に気付かせる内容となっている本動画に対し、SNS上では好感の声が続出しました。

3. 無垢な存在による代弁

■参考エンタメコンテンツ:「ワンピース」 サボ少年涙の訴え

大ヒット漫画ワンピースの1シーンです。
貧富の格差がすさまじく、貴族が庶民を虐げることは普通であるゴア王国。

貴族による庶民に対する嫌がらせがエスカレートし、
とうとう放火までしてしまいます。

そのことに失望した貴族の少年“サボ”が、
「おれは貴族に生まれて恥ずかしい」と泣きながら訴えるシーンです。
「とうとう子供にコレを言わせるのか」というセリフが本テーマを体現しています。

■参考事例 「Generation Lockdown」

アメリカで銃規制を求めるMarch for our livesが実施した施策です。
チームビルディングイベントで、講師を招いて「銃乱射事件に遭遇してしまった時」をテーマに授業を行うことに。

担当者による導入の挨拶の後、講師として現れたのはなんと一人の少女でした。
イベントに集まった大人達が驚きの表情を見せる中で、
少女は流暢に乱射事件に遭遇した際の対処法について語ります。
銃社会であるアメリカでは、まだ幼い子供ですら乱射事件の対処法を熟知している、というショッキングな状況をシリアスに伝えている事例です。

<まとめ>

時代の変化に応じてコミュニケーションの手法は多様に変化していきますが、人間の感情を動かす要素はそう簡単に変わらないのではないでしょうか。

ブランドの目的や存在意義やスタンスを踏まえたうえで、
あらゆるアクションを一連のストーリーとして俯瞰し、
生活者を巻き込みながら世の中にブランドに対する熱量を作っていく活動が求められる中、個人的に心を動かされた体験やエピソードを見つめなおしストックしていくことは、
PRコミュニケーションにおけるチャンスの神様の前髪を掴むうえでの大きなヒントになるのではないかと改めて感じました。

次回は、後ろ髪はどこへ行ってしまったのかという謎に迫っていきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

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